万全を期して望んだ最終戦
しかし予選不発で苦しい展開に
いよいよシーズン最終戦を迎えた。マスターワンのチームスタッフは有終の美を飾るべく、万全の準備を整えて、F1サーキットとして世界でも有名な鈴鹿サーキットへと向かった。
今シーズン、DTECチーム・マスターワンは、大きな前進を果たした。第7戦の岡山国際サーキットでは97号車の小河諒選手が優勝、チームはついに初優勝をすることができた。その前戦となる第6戦の富士スピードウェイでは、小河選手が2位、76号車の菊地靖選手が3位という、ダブル表彰台も獲得している。後半戦、神奈川トヨタの2台は確実にその速さを注目される存在になった。
第9戦までシリーズポイントは、小河選手が81ポイントで5位につけた。3位の山野直也選手との差はわずかに4ポイントで、十分に逆転が狙える位置だ。
ここ数戦、マシンのコンディションに悩まされていた菊地選手のために、チームは76号車の足回りのパーツをサブフレームから交換するなど、大規模なオーバーホールを実施した。その結果、事前に行った富士スピードウェイでのテスト走行では、今年谷口信輝選手がマークをしたコースレコードを上回るタイムを記録することができた。
最終戦の舞台、鈴鹿サーキットはテクニカルなドライバーズサーキット。シケインから高速コーナー、難しい複合コーナーなど、ドライバーのテクニックが試されるサーキットなのだ。ドライバーにとっては難しく、それゆえに攻めがいのあるコースでもある。
レース前の木曜日、鈴鹿でのテスト走行で緊急事態が発生した。97号車にクラッチトラブルが発生、クラッチが滑ってしまうのだ。夕方、三重県鈴鹿市から神奈川県川崎市のマスターワンまで戻り、トランスミッションも含めて交換し、早朝に鈴鹿に戻るというハードワークによって、97号車は再び戦える状態となった。
テクニカルゆえに抜きにくいというコース特性だけに、予選はとても重要になる。
85台という参加台数のため、予選は2つに分けて行われた。DTECチーム・マスターワンの2台は、いずれも2組となった。先頭で2台並んでコースインし、そのままタイムアタックに入る。しかし小河選手がコースアウトし、最初のアタックを失敗してしまう。
続いていた菊地選手は、しかしマシンコンディションに苦しめられていた。オーバーホールした後も、そのハンドリングは向上しなかったのだ。
結局、小河選手は2組8位、菊地選手は2組12位で予選を終えた。40台が並ぶスターティンググリッドで、小河選手が16番、菊地選手が24番という中団からのスタートとなってしまった。
この予選は激しい争いで、昨年のコースレコードを出しても、決勝Aレースに残れないドライバーが出たほどだった。
予選結果から苦しいレース展開が予想された。決勝レースはコースが長いため、周回数が少なく、わずか8周。しかし、朝から雨が降り続く天気の中、波乱が起きる可能性もあった。
1周目途中でセーフティーカーが導入された。数台がコースアウトしただけでなく、スタート直後にストレート上でクラッシュしたマシンを撤去する必要があったためだ。セーフティーカーが入る前、小河選手は12位、菊地選手は19位へと順位を上げていた。
鈴鹿の素早いマーシャルの動きによって3周目に再スタートが切られる。小河選手、菊地選手ともに、激しいバトルを展開しているものの、オーバーテイクはそう簡単ではなく、前へ出ることできない。前を走るペースの遅いマシンに抑えられて、トップ集団との差はどんどん開いていってしまう。
最終的に小河選手が10位、菊地選手が15位で、レースを終えることになった。シリーズポイントでは小河選手は1ポイント上乗せするに留まり、シリーズランキング5位が確定した。