台風接近の不安定なコンディションの中
小河選手が3度目の表彰台をゲット
超大型台風が日本に迫りつつあった10月12日、GAZOO Racing 86/BRZレースは、その上陸地点に近い、九州・大分のオートポリスで開催された。レースは天候によって大きく左右されることが多く、今回のレースもやはり混乱した展開が想定されていた。
86/BRZレースの場合、予選前にタイヤのマーキングが行われ、そのタイヤで決勝レースまで使うことになっている。つまり雨が降ってきたから溝の深い新品タイヤに交換、ということはできないのだ。
タイヤやマシンのセットアップをどうするのか? チームとドライバーは天候の変化を予測しながら、予選を優先させるか、決勝を優先させるか、選択する必要がある。プラクティスが行われた土曜日は快晴だったものの、午後からは風速が高まり、台風の接近を感じさせるものになっていた。
シリーズチャンピオンはすでに谷口信輝選手に決まったものの、まだシリーズ2位以下は決まっていない。ここまで61ポイントを獲得している小河諒選手のランキングは4位で、まだ2位になる可能も残されている。ポイントが1.5倍となるオートポリスでの結果は、大きな意味を持つのだ。
翌日の午前中に行われた予選、そのスタートを待ち構える41台のマシンの上に拡がる空は、灰色の雲が覆っていたものの、まだ雨は降っていなかった。先頭でコースに飛び出していったのは青木孝行選手。その青木選手を追いかけるように雨が降り始め、最初のアタックを終わろうとしたタイミングで雨足が強まった。そのためほとんどのドライバーは雨によるグリップダウンによってタイム更新ができず、最初のアタックがベストタイムとなった。
その最初のアタックで雨の影響が最も小さかった青木選手が、そのままポールポジションを獲得した。2位には佐藤晋也選手、そして3位に小河選手が入った。
76号車をドライブする菊地靖選手は、どうもマシンのコンディションがしっくりこないようで、タイムも小河選手から0.7秒遅れの8位となった。このマシンの不調は前戦の富士スピードウェイから顕著になった症状で、マスターワンのスタッフが原因を探りながら各部をリフレッシュしたものの、復調はならなかったようだ。
チャンピオンが決まって気が抜けた、ということもないだろうが、谷口信輝選手は最初のアタックで珍しくミスをし単独クラッシュ。応急処置をして再度アタックしたものの、雨が強まった後となり、予選21位に沈んだ。
午後の決勝レース直前、風は強くなっていたものの、雨はほとんど感じることがない程度でしかなかった。しかしマシンがスターティンググリッドに並び始めると、パラパラと大粒の雨が降り始めた。スタート直前のフォーメーションラップでは、各ドライバーが路面のグリップを確認していた。
その濡れた路面で上手くスタートを決めたのは予選2位の佐藤選手で、ポールポジションの青木選手に並んだ。しかし1コーナーでは青木選手が前に出て、逆転することはできなかった。予選3位だった小河選手はスタートに失敗、5位へとポジションを落してしまった。しかし2周目に先行を許した水谷大介選手をパス、4位。前を走るのは優勝経験もあるベテラン、織戸学選手だ。
その2周目、後方集団で3つのコースアウトやクラッシュが発生、車両を移動させるために3周目からセーフティカーが入った。小河選手は4位、菊地選手は9位のポジションだった。雨は徐々に小降りとなり、車両の移動が終わった6周目に再スタートが切られた。
織戸選手が狙い澄ませたように、再スタート直後に2位佐藤選手を攻略すると、そのままトップを走る青木選手に迫る。この3台がダンゴ状態でトップ争いをする中、小河選手はやや遅れて4位を走っていた。
トップの青木選手のペースが上がらず、何度も織戸選手がアタックする。9周目には一度オーバーテイクに成功するものの、再び青木選手が取り戻す。その先頭集団に追いついた小河選手はファイナルラップで佐藤選手をオーバーテイク、3位へポジションを上げた。その前では織戸選手がトップに立ち、今シーズン2勝目を挙げた。
小河選手は今シーズン3度目の表彰台となり、シリーズポイントは20獲得したものの、織戸選手に逆転され5位。しかし3位山野選手との差はわずかに4ポイントへ縮まった。
9位を走行していた菊地選手は、しかしペースを上げることが難しく、12位でゴールした。不調を訴えるマシンは、最終戦鈴鹿に向けて再度チェックと大幅なリフレッシュを実施し、2台揃っての表彰台を再び狙う。